希望者は学生課にて登記のこと、と掲示板にあったので恐る恐る行ってみた。
さぞや頼むのも大変で出す書類も多かろうと思っていたら意表を突かれ、呆気に取られる。
「家庭教師が欲しいんですけど」と言っただけで登記用紙を出してもらえた。
項目は質問するまでもなくただ氏名・部屋番号と希望言語だけ。
しかも何かの印刷物だった紙の裏面という簡単さである。
ここで言う「家庭教師」は日本のそれと少し違い、「互相」なんてものもある。
お金を払って中国語を教えてもらうという場合もあれば、
無償で自国語を教え合う契約なんてもの(これが互相)もあったりしてしまう。
料金を惜しむ訳じゃあないが、互相の方がいいな〜。さっぱり意思が通じなくても困るので。
それにお互い無償の方が友達になれそうな気がする…..って贅沢かしらん。
やっと学生証をもらう。
どうしたことかここの学校では入学してこのかた学生証をくれなかった。
それが昨日付の掲示で交付が始まったとある。…..掲示板は昨日も見たはずなのに!
とりあえず授業を終えてから学生課に行ってみる。人がたくさんいた。
恐らく掲示に気づいた連中が一挙に来ているんだろう。何度か割り込まれた。
どう言って申請したものか分からなかったので、とりあえず「新入生なんですけど…..」
それでも反応がぱっとしないので「学生証が欲しいんですが」と単刀直入に言ってみた。
私の語学力ではこれが精一杯なので致し方ないが、かなり乱暴な表現のような気がする。
居留証の有無を聞かれ、またしても途惑う。そんなもん持ってないっての。
「半年なんで確か要らないんじゃ…..?」それでも分かってくれない。
「ビザがFなんですよ」でやっと事情を察してもらえた。短期滞在者のつらいところ。
やっと学生証を探し始めてもらえたところ、右足に異様な感覚を覚える。
無性に痒いのだが、まさか人前でスカートをたくしあげて掻く訳にも行かない。
ことが済んでから確かめてみると、どうやら当地の蚊に咬まれたようだった。
しかも僅かな待ち時間の間に三個所も。やっぱり美味しいのか?私。
部屋で全く被害に遭わないせいか油断していたこともあったが、狂いそうに痒い。
免疫がないのか、一度やられると十日は腫れていたりする。前途多難。
学食でビーフシチュー発見!ぼられる。
最近ここの学食が出す物を覚えてきたので余り危険な賭けはしないことにして、
大抵いつも肉もの一品と野菜もの一品を盛り合わせてもらって食べている。
そうすると栄養のバランスも取れるし経済的でもあるからだ(笑)。
仕組みとしては、肉ものは一皿三元、野菜ものは一皿二元、御飯が一杯二角。
おかずは盛り合わせにすると半額ずつしか取られない。
どう見ても半人前分以上あるのに、かなりお得な話である。
閑話休題。そんなわけで、今日はお昼に青菜の塩炒めと酢豚を食べようとした。
真っ赤なとろみのある液体を見て、私は酢豚のたれだと思ったのだ。
しかもいい感じで肉片が入っているので、疑いもなくそれを注文してみた。
炒め物は明らかに二元なので、何の気なく二元七角を出すと、
例によって愛想のないおばさんに「四元二角!」と怒鳴られた(忙しいので機嫌が悪い)。
妙な値上げだと思いながら仕方なく要求されただけ払い、席につく。
ふと皿を見ると、どうも酢豚の顔色ではない。ここでやっと間違いに気づいた。
つついてみると牛肉(らしいが不明)、しかも骨つきである。やられた。
何でこんなもんに六元も払わないかんのぢゃ!…..ここは安いのが取り得なのに。
日本人に韓国人(?)と間違われる。ショック!
近所の百貨店で店員に「韓国人かい?」って聞かれたことはあるけど、
何でよりによって日本人に?…..その人いわく、一人だったからだそうで。
確かに日本人は群れる。異郷となると余計なのかもしれないが、とりあえず固まる。
そうされると浮きやすい体質の私なんかは孤独なもんなのよね〜。
でも、そう言えば韓国人だって群れてるぞ。理由になってないやんけ!
要は私って出自が怪しいのか?う〜む…..原因が見当たらない。
スーパーの店員に上海語で話し掛けられたこともあったことはあった。
確か上海人は外地(外国のみならず)の人を見ると標準語で話すんだったんじゃ…..。
いよいよ分からなくなってきたぞ、私。
暇にまかせて練習していたら、ちょっとだけ胡弓が上達。
予習がひと段落したので気分転換がてら散歩に出てみたが、つまらない。
知りあいは転がってないし、開いてるはずの活動室が閉まってるし。
ちょっとだけ近所に気を遣い、出入り口の戸を閉めて練習開始。
(ここは何故か部屋の出入り口が網戸と普通扉の二重構造になっている。)
やっと音程と音質が両立を目指せるところまで来た。
両立の達成には今月いっぱいでは足りない気がするが、ともあれ目標は今月中に一曲!
雨が降ったりやんだり。休みなので出不精になる。
ずっと気づかなかったが、実は台風6号の影響らしいと後で判明。
道理で雨風が異様に強いと思った。…..ニュースが聞き取れない哀しさ。
風しかない間ちょっと窓を開けていたら、部屋の奥の扉がぱくぱく動いていた。
雨が網戸を濡らし始めたので、止む無く硝子窓を閉めて扇風機をつける。
部屋には天井から大きな扇風機が吊るしてあるので、つけると結構しのぎやすい。
休みぐらい電力を使わずに過ごしたかったのに、蒸し暑くて泣き寝入り。
ここの寮では電気料に使用制限があり、50kwを超えたら残りは自己負担なのだ。
ただでさえ前半に空調びたりの生活を送っていたので請求書が怖い(笑)。
一週目の授業が終わったせいか、テンション低下。
流石の私も余り長くはハイでいられないらしい。慣れのせいもあるかも。
気晴らしに近所の市場を覗く。ここでは南北の通りごとに一個所ずつあるらしい。
かなりの活気と悪臭のるつぼ(笑)だ。きっとここに入れない日本人は多いだろう。
隅っこでは三畳大の鳥篭に烏骨鶏と鳩を飼っていた。捌いて売るらしい。
この辺と魚売場が主な臭いの発生源であろう。でも混沌として分からない。
よく魚売場で蛇を見掛ける。見慣れたが、どうして水に浸して置いてあるんだろう。
野菜売場ではおっちゃんが冬瓜を輪切りにしながら叩き売りしていた。
もう旬は過ぎているらしく、身と種の間がスカスカしている。
見回すに、旬なのは茄子と真菰(太い草。筍のような食感)らしい。
茄子は日本の物より長く、色もピンクがかった薄い紫である。柔らかそう。
隣に積んである大根が茄子より細くか弱いので笑いを誘うが、元々なんだろうか。
そもそも中国語では”大根”と言わないのでどうでもいいのかもしれない。
果物も、訳の分からないものが平気でたくさん並べられている。
柿や梨ぐらいなら亜種なんだと思えば理解できるが、何の類いともおぼつかない物もある。
路上でも売っている人が多い”海棠果”とは何ぞや?
大きさは李ぐらい、色と形は林檎の未熟果を思わせるが…..薄緑ところにより赤。
あいにく多量にまとめ売りしているので、冷蔵庫もない私には買えない。
実家からの小包を郵便局まで取りに行く。
宿舎には何故か配達票が入っていただけだったので、取りに行くはめになった。
しかもいつからか知らないが三日以内に受け取らないと保管費が一日で百五十元!
さっさと行かねばとは思うものの局は歩いて二十分強…..。
しかも九月の後半とは思えぬ炎天下、風ひとつない中をである。
受け取り窓口で配達票を見せたら、身分証とサインを要求された。
日本の学生証を出したら何故かその学校名と学籍番号まで書かされた。
でも、そんなもんで受け取れて来られたのは実は幸せな方らしい。
師匠いわく、本当は当地の学生証が必要なはずだとか。
でもまだ発行されてないもんは使いようがない。無理に押し切った感もある。
帰ると日本の文通相手から封書が来ていた。
手紙なら宿舎まで届くのに、何で小包は届かないんだろう。
「写作」と「口語」の授業。
とりあえずひととおりの授業を体験したことになる。まぁ何とかできそう。
それにしても入学したての私にすら先生の良し悪しが分かってしまうとは…..。
口語と精読の先生は似たような速さで喋っているのに、分かりやすさが違いすぎる。
目立って口語の授業内容が簡単だという訳でもない以上、きっと先生のせいだ。
訛りの作用も考慮すると、どこ出身の先生かという問題も侮れない。
写作の授業で原稿用紙を買ってくるようにとの指令。
いわく、購買部では売っていないのでどこかで適当に調達すること。相場は二元。
ところが、近くのやや怪しい日用品屋に行ったら何と一冊六角だった。
ちゃっちゃと四冊をそこで買い、二冊を師匠に進呈する。だって安いから。
教訓:店は覗いてなんぼ。
とうとう胡弓を買ってしまう。
今日は午前中で授業が終わったので、午後から師匠と買い物に出た。
…..と書くと簡単そうだが、今日の授業はしんどいことこの上なかった。
何がというと、校舎の移動である。朝二時間を本学で、残りを学院でという日程。
本学〜学院の間は1km以上ある(推定)。しかも階段の上り下りつき。
本学二号棟の三階から学院一号棟の四階まで移動するのに与えられた時間は十五分!
ずっと要らないと思っていた自転車がほしくなってしまうひとこまだった。
汗が引くころに授業も終わったので、いざ師匠の部屋へ。
私の持っている扇子と同じ物を買いに行くという。どっちにするのやら。
売り場の案内がてら同行し、一緒に品定めを云々してみた。ちょっといい気分。
そこで友諠商店の楽器売場に行ってしまったので、胡弓を買ってしまったのだ。
馬の毛でできた弓を引き、鉄の弦をこするだけ。原理はいたって簡単である。
でもなかなか音らしい音が出ない。多分いい音が出せるまで一週間はかかるだろう。
しかも材料の蛇皮(ニシキヘビらしい)ワシントン条約に引っかかる為、
そのうちこいつを抱えて遠路はるばる個人使用証明を取りに行かねばならない。
奏法を習うのにも手続きをするのにも、何につけ要るのが会話力(泣)。
せいぜい勉強さしてもらいまひょ。