遠くなる場所

【留恋】
『動』
(1) 名残り惜しく思う,未練を残す.
(2) 懐かしむ,懐旧の情にかられる:

デイリーコンサイス中日辞典 (三省堂)より。
未練というのではないが、このところそんな心境で近場を歩いている。
蛇足だが中国語での発音も少し冷たい秋風に似て響きがよい。

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贅沢ごっこ

国内線プレミアムクラスとやらに乗ってみた。
株主優待券を使ったので、支払金額は普通運賃より安いぐらいなのだが。
結論、拒絶するほどではないが二度と乗らないであろう。
数千円を付加するほどの価値は感じられなかった。


・座席
 最大の価値はここにある。椅子の幅が広く、座った両側に拳一つ分を超える余裕があった。
 いかんせん、大阪-東京便のような短距離では存分に味わうほどの時間はない。
 レッグレストなるものもあるのだが、やはり使える時間が短い。
 おまけのスリッパ(靴べら付き)はふかふかして好感が持てる。


・優先搭乗
 早朝の空いている便だったのでありがたみが感じられなかった。
 むしろ先に座っていると、プレミアム席でない人々が膝を跨いでいく。
 窓側の席を取ればよかったのだろうが。
 降りる時も優先して通してくれるはずなのだが、はずなだけだった。
 プレミアム席には3人しかいなかったのに、戸口には10人以上が詰めかけていたのだ。


・食事
 なんのことはない和風弁当だった。
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 普通席でも1800円で食べられるそうだが、これに額面分の価値は認めがたい。
 好きな飲み物を選ばせてくれるようだが、メニュー冊子はなかった。
 食後にも飲み物を勧めてもらえたが、短時間でそう何杯もぐびぐびとは…。


・その他
 羽田や伊丹を出る便なら専用ラウンジの利用権もあるらしい。
 あいにく神戸発だったので普通のカード会員用ラウンジを利用した。
 別にこっちでいいやと思ってしまったのは負け惜しみかもしれないが。


慣れないことをするものではない、といったところだろうか。
思ったほど贅沢感を味わえず、肩身の狭さもなかった。
高いサービスを購入しても、中身の安さはそうそう拭えないのかもしれない。
次の便からは、おとなしく普通席に戻ることにする。

永沢寺

三田市の永沢寺(地名はエイタクジ、寺社名はヨウタクジ)に行ってきた。
芝桜が丘を埋め尽くすという「花のじゅうたん」観光が主目的。
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三田駅からバス一本と聞いていたので気軽に出かけたところ大失敗。
この連休中は臨時バスが出ているが、今日は平日なので乗り継ぎが必要とのこと。
乗り継ぎがあるまではよかった…が、まさかの待ち時間90分
ターミナルかと思っていたバス停にはターミナル施設どころか対面の標柱さえもない。
素直に待っていては現地観光の時間がなくなりそうだったので、タクシーを呼んだ。
電話から15分ほどでタクシーが現れ、乗車10分ほどで現地へ。
平日だからなのか、場所柄そうなったのか、見物客はまばらで若い人となると皆無。
犬を連れて入園していた人々が相対的に…といったところだった。
肝心の芝桜はと言うと、ところどころ地面の被覆が見える微妙な密度。
確かに複数の品種があって興味を引きはしたのだが、期待したほどの規模がなかった。
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むしろ惹かれたのは岩ツツジ。
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道中の山肌に見られたものと同じ青紫も透明感があってよい。
園芸品種なのか、紅が差した花色のものもあった。
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「丹波の焼き栗」をおやつに園内のベンチで休憩。
面白い色のムスカリが植えてあった。


帰りのバスまで時間があるということで近接する牡丹園も覗いてみたが、こちらはさっぱり。
例年なら今が見頃のはずなのだが、一部の早咲き品種しか咲いていなかった。
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しかもなんとなく貧弱。


期待もせず立ち寄った永沢寺そのものの植栽が一番よかったというのはどういう皮肉か。
曹洞宗で総持寺の次という高い序列の力なのか、敷地内全体の手入れが行き届いている。
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百日紅の新芽。
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標高が高いためか、八重桜がまだ三分咲きだった。
ちょっと上着の襟を立てたくなる風が吹く中、桜の風情を堪能。
しっかりと深呼吸できたので、よしとする。

接待ごっこ

義母が昼食の予約をしてくれているので、まずは母の手土産を運びがてらダンナ実家を訪問。
しばらくお茶など頂きながら、母達の世間話をそっと聞き流す。
ほどよい時間に義母・ダンナ・母・私の四人で会食場所へ数駅移動。
勿体ないほど贅沢な和食コース料理を頂いた。
食事中、私も聞いていなかったような昔の話をいくつか耳にして内心ざわつく。
物心つくかつかないかの頃から私が伯母の世話になっていた背景事情。
両親が共働きだったからとしか聞いておらず、そんなものかと疑問にも思っていなかった。
母方の祖母が入院していたためだったのだという。
それ以上は聞くまでもなく、いろいろな点と線がつながっていった。
まさに、親の心子知らず。


食後は途中駅で義母と別れ、淡路島へ。
ダンナが珍しく宿を手配してくれていたので、一路そちらへ向かう。
高速バスでは母と並んで座り、話しそびれていたこちらの近況を少し伝えた。
「ずっと孤独な仕事じゃないかと心配していたから、友達ができて何よりだよ」
ぐらいしか返事はなかった。
バスが終点に着くまでの間、父と兄の近況を聞く。
いずれとも直接の連絡がないため、母づてに知るしかない。
まあ相変わらずとしか言いようのない状況だったのは、一応いいことなのだろうか。


予約してくれていたのは、温泉大浴場がある大型ホテルの、何故かスイートルームだった。
「ちょっとの追加料金だったから」というセンスは正直こちらにはなかったので驚く。
母には和室部分に寝てもらい、我々はツイン部分に寝ようという話になった。
お陰で、特に暑がりの母が気兼ねなく冷房をつけられるように。
26度は我々にとって十分な涼しさだったが、客観的に考えれば夏日の気温なのだった。
母と連れだって温泉大浴場へ。
いつになく彼女が小さく、年を取ったように見えた。
特にこれといった話をするでもなく、部屋に戻る。
実は移動中に定期案件が一つ入ってしまったのだが、今回はPCを持ち出していなかった。
母がいるところで仕事をすると、悲しませてしまうからと思い、敢えて自宅に置いて出たのだが。
定期案件は私が客先から指名されており、非常に断りづらい。
しかも分量が少ないので、納期も短い。
部屋にはLAN回線が用意されていたので、愛機さえ手元にあればすぐ済む難易度だった。
ダンナが持参したPCを貸してくれたのだが、ちょっと触って違和感のあまり断念。
帰着後に着手しても納期は守れそうだったので、ひとまず後回しにして何気なく過ごす。


夕食は、これまた豪勢な和会席だった。
開始時刻を遅めにしていたのだが、品数の多さに食べきるのがようやっと。
もう少し若かったら、母が箸を付けなかった揚げ物を譲り受けていたかもしれない。
「もう15年前だったら残さず食べられたのかねぇ」が少し耳に痛かった。
そもそも母は小食なほうだったが、さらに…なのだろうか。


食後、一時間ほどして二度目の入浴。
リビングでついているテレビにどうしても苛立ってしまい、MIDを立ち上げてついったーを覗く。
私がテレビ、殊にドラマ嫌いなのは母も承知しているはず、という甘えもあった。
黙っていては不機嫌に見えそうだし、話しかけたら邪魔になりそうで、不必要に気が咎める。
結局いつもこんな感情を抱いてばかりで、まともな気遣いが何もできていない。
一方的に気まずくなってしまったので、一人で再び大浴場へ。
幸い、私が戻って間もなく二人は就寝した。
こちらは眠れそうにもないので、悪戦苦闘しながらも結局ダンナのPCで翻訳作業。
これでは結局、散財しただけで親孝行にはなっていなかったような気がする。